ヒト胎盤およびヒト甲状腺癌由来のλgtll cDNAライブラリーより、抗NOR-90抗体陽性を確認したTT例の血清を用いてスクリーニングを行い、hUBFをコードする単一のクローンを得た。インサートcDNAは1.8および2.8kbの大きさを持ち、それぞれNOR1.8、NOR2.8と名付けた。NOR1.8発現産物を用いた免疫ブロット法で、教室の抗核小体抗体陽性91例をスクリーニングしたところ、9例(9.9%)が抗NOR-90抗体陽性であった。初診時高齢者が多く、一次性または二次性シェ-グレン症候群(SjS)が7例(78%)、肺線維症が5例(56%)、慢性関節リウマチ(RA)が4例(44%)と、従来から関連が報告されていた強皮症(3例、33%)より高頻度であった。 全長cDNAであるNOR2.8を制限酵素で切断後、蛋白発現ベクターにサブクローニングし、抗NOR-90抗体陽性血清を用いたコロニーブロット法によりスクリーニングした。その結果異なる5つのcDNA断片が得られ、それらの発現産物と抗NOR-90抗体陽性血清9例との反応性を検討した。反応様式は多様で、hUBF上に少なくとも5つのエピトープが存在することが判明した。特にDNA結合部位とされるアミノ酸89〜221のA領域と、別の転写因子であるhSL1の結合部位であるアミノ酸388〜453のD領域に主要エピトープが含まれると考えられた。また全例がhUBF分子上に少なくとも2つのエピトープを有した。以上の結果は抗NOR-90抗体産生に関し、antigen drivenの仮説を支持するものである。さらにSjSまたはRA患者では、強皮症患者に認められなかったマイナ-エピトープ(B、C、E領域)との反応性が認められ、疾患によって反応性が異なる可能性が示唆された。
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