研究概要 |
成人Still病は重要なリウマチ関連疾患であるが、未だその原因についてよく解明されていない。申請者らは、本症の病因解明の研究の過程において活動期の成人Still病患者2名の末梢血中にTCRγδ型T細胞が有意に増加している事を発見した。そして、このTCRγδ型T細胞は患者の病態の増悪に伴い急激に増加し、改善とともに速やかに減少した。また、このTCRγδ型T細胞は、本症の活動性を示すと言われている血清CRP,ferritinと強く相関していた。さらに、8名の非活動期の成人Still病患者のうち3名は有意に末梢血TCRγδ型T細胞が増加していた。この増加しているTCRγδ型T細胞はVγ9/Vδ2型TCRγδ型T細胞であった。また、末梢血TCRγδ型T細胞が有意に増加している患者の末梢リンパ球はexogenousHSP65に対して著明に反応し様々なサイトカイン(IL-6,GM-CSF,TNF-x,INF-γ等)を産生した(平成5年日本リウマチ学会にて発表、主論文はJ.Rheumatologyに投稿中)。 現在、TCRγ,TCRδ遺伝子に特異的なプライマーを用いたRT(reverse transcriptase)-PCR法及びadaptor-ligation法を用いてTCRγ,TCRδ遺伝子のcDNAを増幅し、クローニングしたTCRγ,TCRδ遺伝子の塩基配列を決定している。 近年、抗原特異的TCRγδ型T細胞が自己免疫疾患や結核菌、マラリア等の細胞内感染菌との関連が明らかになった。結核菌、マラリア等の細胞内感染菌を認識するTCRγδ型T細胞は極端に偏った抗原レセプターを持つこと(oligoclonality)がすでに明らかにされた。もし、本症におけるTCRγδ型T細胞の抗原レセプターがこれらの細胞内感染菌を認識するTCRγδ型T細胞の抗原レセプターと一致すれば本症の原因としてこれらの細胞内感染細菌による感染が強く疑われる。
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