肝線維化はさまざまな病態によって起こり、その変化は不可逆的で適切な治療法は今なお確立されていない。申請者は培養伊東細胞を用いて遺伝子レベルでコラーゲン産生を調節し、肝線維化の遺伝子治療を目的とする基礎的研究を試みた。 培養伊東細胞および線維芽細胞に、コラーゲンmRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドをトランスフェクションするかあるいはコラーゲンcDNAの5´末端と3´末端を逆向きにトランスフェクションし、そのコラーゲン産生能に与える影響を免疫組織化学的および分子生物学的に検討した。 マウス肝から分離した培養伊東細胞に、コラーゲンIV型mRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドをトランスフェクションすると、免疫組織化学的にIV型コラーゲンの産生抑制が認められた。また、マウスおよびヒト線維芽細胞にコラーゲンIおよびIII型mRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドをトランスフェクションすると、同様にI型およびIII型コラーゲンの産生抑制が認められた。さらに、RT-PCR(reverse transcription-polymerase chain reaction)による検索で、コラーゲンmRNAに対する影響が示唆された。 以上の結果より、アンチセンスオリゴヌクレオチドは遺伝子レベルでのコラーゲン産生の調節に有効であることが示唆された。この結果は第84回日本病理学会総会にて発表予定であり、さらに投稿準備中である。 現在、コラーゲンcDNAの5´末端と3´末端を逆向きにトランスフェクションし、その影響を検討中である。今後は、伊東細胞の細胞株を樹立し、遺伝子レベルにおけるコラーゲンの研究を発展させる予定である。
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