研究概要 |
計画では、肝生検材料より、浸潤リンパ球を分離・増殖させ、当該肝癌細胞に対するキラー活性を測定するものであったが、この方法では、必要量の細胞を得ることができなかったため、手術切除肝癌あるいは癌性腹膜炎腹水を材料として用いた。材料より分離したリンパ球をIL-2のみ(コントロール)あるいはIL-1,2,4,6で刺激増殖させ実験に用いた。肝癌細胞は株化し、実験に供した。その結果、 1.浸潤リンパ球に含まれるT cellについて、(1)無刺激(2)IL-2刺激(3)IL-1,2,4,6刺激 各々のリンパ球を材料に、TCRレパートリーをPCR法で解析したが、各群間に有意な差は見られなかった。 2.上記(2)(3)各群において、増殖率は(3)群の方が良好であったが、含まれるCTLの比率はFACS解析の結果差はなかった。 3.(2)(3)各群リンパ球の当該肝癌細胞に対する障害活性をMTTアッセイにより解析したが、明らかな差は見出せなかった。 4.1症例については、末梢血より得たリンパ球に同様のIL刺激を加えたものとも障害活性を比較したが、明らかな相違はなかった。 以上の結果より、肝癌浸潤リンパ球をIL-1,2,4,6で刺激し、肝癌障害T細胞を効率よく得ようという今回の試みは、従来のLAK療法と比べてもあまり有効なものではないと思われた。しかしながら、今回の実験中に得られた肝内胆管癌細胞株は、肝細胞の前駆細胞としての性格を有するような分析結果が得られており、今後、肝癌発生の研究に有用であると考えられる。現在その細胞株を用い実験中である。
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