温虚血再潅流誘導性肝細胞障害発現機序にIL-8がどのように関与するかを、実験的ラット肝虚血再潅流モデルを用いて検討した結果、以下に示す知見が得られた。 1.温虚血再潅流性肝細胞障害モデルの経時的な組織所見の検討では、虚血再潅流後にまず肝内に多数の好中球、単球が浸潤し、その後から肝細胞の広範な壊死が生じることから、好中球、単球の肝組織内への浸潤が、この肝障害に関与していることが明らかになった。 2.温虚血再潅流後に肝内に浸潤している好中球、単球数は直前に脾臓を摘出することにより減少することから、これらの細胞は脾臓から由来していることを明らかにした。 3.温虚血再潅流時の脾臓単球はLPS刺激により、コントロールラット脾臓単球のLPS刺激よりも多くのTNF産生を認めたが、このモデルでは大循環血中のTNFは高値を示さず、肝細胞障害とTNF値との間には、明らかな関連を認めなかった。 4.温虚血再潅流時には肝内への好中球浸潤に先立って血中IL-8値の上昇を認め、この上昇は好中球浸潤の程度に良く一致して変動した。また、肝組織中のIL-8濃度も血中IL-8と同様の変動を示したことから、このIL-8は肝組織から由来したIL-8が血中へ放出されたものと考えられた。 以上より、温虚血再潅流誘導性肝細胞障害には脾臓から遊走し肝内に浸潤する単球、好中球の作用が重要であり、温虚血再潅流時に誘導されるIL-8の上昇が好中球浸潤に関与する可能性が示唆された。
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