慢性ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎の病態形成にアポトーシスがどのように関与するか検討し、以下に示す新たな知見を得た。 1.慢性ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎では、分離直後の末梢血リンパ球の一部にFas抗原が発見されていることを、フローサイトメータを用いた解析により明らかにした。 2.しかしながら、分離直後のFas抗原を発見している末梢血リンパ球は、抗Fas抗体を投与してもアポトーシスは生じないことが明らかになった。 3.分離直後の末梢血リンパ球は細胞質内にbc1-2抗原を発現しており、これがアポトーシスによるリンパ球の細胞死に防御的に作用しているものと考えられた。 4.末梢血リンパ球をIL-2や抗TCR抗体を添加し培養すると、抗Fas抗体によるアポトーシスが誘導されることが明らかとなった。この際における、リンパ球のFas抗原およびbc1-2抗原発現の変化については、現在解析中である。 5.IL-2や抗TCR抗体により増強される、このリンパ球抗Fas抗体誘導アポトーシスは、ウルソデオキシコール酸の同時投与により制御される可能性が示された。この機序に関して、Fas抗原およびbc1-2抗原の発現の面から解析中である。 6.これらの肝炎患者に対してステロイドやインターフェロン治療を行った際に、IL-2や抗TCR抗体により増強されるリンパ球の抗Fas抗体誘導アポトーシスが抑制されるか否かについては今後の検討課題である。
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