研究概要 |
急性膵炎の急性膵炎の重症化に関与する因子として、膵血流障害とそれに引き続き発生するフリーラジカルによる膵細胞障害は最も重要な要因のひとつであると考えられている。そこで、今回は、フリーラジカルの消去系である、superoxide dismutase(SOD)の実験膵炎発症・進展過程における膵組織中活性の変化を初めて免疫組織学的に検討した。 -ラット実験膵炎におけるsuperoxide dismutase(SOD)の免疫組織化学染色の検討- Wistar系雄性ラット(体重250g前後)を用い closed duodenal loop(CDL)膵炎を作成した。CDL作成後の0,3,6,12時間(各々0h-CDL、3h-CDL、6h-CDL、12h-CDL)後に膵組織を摘出した。得られた膵組織について、一次抗体として、Cu/Zn SODに対する家兎抗ラット抗体を用いた酵素抗体法(間接法)にて、染色し対比検討を行った。 【結果】 1)対照群(0h-CDL):Cu/Zn SODの発現は導管上皮細胞に高度にみられ、腺房細胞にも中等度認められた。 2)膵炎群:膵炎発症早期の3h-CDL(軽度の浮腫性膵炎)群において、空胞化のみられる腺房細胞のCu/Zn SOD発現の低下がすでに顕著で、CDL作成6時間以降では腺房細胞の壊死部位ではCu/Zn SODの発現はほとんどみられなかった。また、導管上皮細胞も3時間御よりCu/Zn SODの発現の低下がみられ、時間の経過とともに発現の低下は顕著となり、12時間後では壊死部位でほとんど発現がみらなかった。腺房細胞100個あたりのCu/Zn SOD陽性細胞数の変化を以下に示す。0h-CDL;98±2、3h-CDL;22±8、6h-CDL;4±4、12h-CDL;2±2であった。導管上皮細胞100個あたりのCu/Zn SOD陽性細胞数の変化を以下に示す。0h-CDL;99±1、3h-CDL;42±10、6h-CDL;24±8、12h-CDL;4±4であった。 【結論】 ラットCDL膵炎において、膵組織中Cu/Zn SODは膵炎発症早期よりその発現が低下し、膵炎進展とともに発現の低下は顕著となった。以上より、CDL膵炎において発症早期より膵組織中Cu/Zn SODが消費されることが初めて明かとなった。
|