研究概要 |
1.糖転移酵素基質の調整 ヒト胎盤より脂質を抽出し,糖脂質シアリルパラグロボシドを精製した.精製したシアリルパラグロボシドは糖脂質はエンドグリコセラミダーゼ処理の後,2-アミノピリジンで蛍光標識し,PA化シアリルラクトネオテトラオースとした.またこの一部を酸水解してPA化ラクトネオテトラオースを作製した. 2.糖転移酵素活性測定 大腸癌の手術切除標本からミクロゾーム画分を取り,蛍光モニターを取り付けた液体クロマトグラフィーを用いてsialyl Le^x,sialyl Le^a合成に関与するフコース転移酵素活性,シアル酸転移酵素活性・Sd(a)/N-アセチルガラクトサミン転移酵素活性を測定した. 3.糖鎖抗原の発現解析 sialyl Le^x,sialyl Le^aの発現をモノクローナル抗体を用いたELISA法によって解析した.この結果大腸癌では,非癌部と比べるとα2,6シアル酸転移酵素活性が上昇している傾向があるが,α2,3シアル酸転移酵素活性は同等か低下している傾向のあることが解った.これに対してSd(A)N-アセチルガラクトサミン転移酵素活性は正常組織に高く癌組織では低下していた.sialyl Le^x,sialyl Le^aの発現が亢進している10数症例でフコース転移酵素活性,シアル酸転移酵素活性の全てを測定したが,全例に共通する糖転移酵素活性の変化は見いだせず,sialyl Le^x,sialyl Le^aの発現亢進のメカニズムはそれぞれの症例によって異なるのではないかと考えられた.
|