研究概要 |
本年度は、アデノウイルスベクターを用いた肺癌遺伝子治療の臨床応用へむけた基礎的検討を行った。 結果は以下のとおりである。 1.プロモーターの選択 各種プロモーターを持つβ-galactosidase(LacZ)遺伝子発現アデノウイルスベクターを用いて、ヒト肺癌細胞株(PC-7,PC-9,PC-14,N231,H69)において高効率に遺伝子発現可能なプロモーターを検索した。その結果、いずれの肺癌細胞株においてもCAGプロモーター(chicken β-actin promoter+CMV enhancer)を有するAdexlCAベクターが最も効率よく遺伝子導入・発現可能であることが明らかとなった。 2.初代培養肺腺癌細胞においても、AdexlCALacZLによって高い遺伝子導入・発現が得られることが明らかとなった。 3.CAGプロモーターを持つIL-2遺伝子含有アデノウイルスベクター(AdexlCALacZL)によるIL-2遺伝子導入によって、初代肺腺癌細胞より高いIL-2の産生が得られた。 4.100Grayの放射線照射された初代培養癌細胞に対しても、AdexlCAIL-2による遺伝子導入が可能であり高いIL-2産生が得られることが明らかとなった。 5.健常ヒト血清存在下では、アデノウイルスベクターによる遺伝子導入が阻害されるものの、血清非存在下に遺伝子導入した細胞からIL-2産生には正常ヒト血清血清は影響を及ぼさなかった。 6.AdexlCAIL-2によってヒトIL-2遺伝子を導入されたマウス肺癌細胞(3LL)の移植によって、腫瘍特異的免疫が誘導されることが確かめられた。 以上のことより、肺腺癌細胞への遺伝子導入におけるAdexlCAベクターの有用性と共に、それによってIL-2遺伝子を導入された肺癌細胞の移植による遺伝子治療への応用の可能性が示唆された。
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