今年度は、山梨医科大学第三内科で診療を行っている脊髄障害患者6例について、微小神経電図法を用いて交感神経活動を導出することができた。 すべての検査について患者に目的及び内容を十分に説明し、文書または口頭で同意を得た後、以下の検査を行った。患者を仰臥位とし、一側下肢に無麻酔経皮的にタングステン微小電極を刺入し、交感神経の活動を導出した。脊髄障害患者では予想よりはるかに神経活動を導出することが困難であったため、タングステン電極は対象人数の割に大量に必要とした。また、これまでの前置増幅器のみでは、十分な振幅の神経活動を得られなかったため、新たに微細電極用増幅器を使用し、記録を行った。 結果として、安静時の交感神経活動は脊髄障害患者では、脊髄障害のレベルに関係なく減少傾向となることが明かとなった。頭部挙上負荷、バルサルバ負荷の血圧、交感神経活動の反応性は軽度低下していたが、対象患者が少なく有意なものではなかった。また、下肢に不随意運動のみられた症例では、筋収縮後に反射性バースト活動がみられることがあり、心電図上のR波との潜時の比較を行い、そのバースト活動の性格・病態機序などにつき検討を加えた。 皮膚交感神経活動(SSNA)では、上下肢の末梢での皮膚血流をレーザードップラー血流計で測定し、皮膚電気刺激でのSSNAと皮膚血流の反応性を検討したが、脊髄障害患者では血流の振幅が小さい傾向があり、十分な分析に耐える記録が得られず、今後の検討課題と思われた。
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