研究概要 |
原因不明の脱髄性疾患である多発性硬化症(MS)では、病初期において末梢血中を流れるeffector細胞の血液脳関門通過が重要であると考えられている。特にeffector-細胞と脳内血管内皮細胞との接着が重要で、我々は血管内皮細胞に影響を与えうる種々のサイトカインの動態と多発性硬化症患者末梢血中の単核球と内皮細胞との接着について検討してきた。今回我々は多発性硬化症患者(acute relapsing type MS,12-例、chronic progressive type MS,7例)の末梢血中単核球のサイトカインm-RNAの発現についてRT-PCR法を用いて検討した。 その結果、acute relapsing type MSの急性増悪期とchronic progressive MSではinterleukin-1,interleukin-6,tumor necrosis factorのそれぞれのサイトカインについてm-RNAの発現が増加しており、特にacute relapsing type MSでは急性増悪期に高値、寛解期に低値を示して病態をよく反映していた。なおtransforming growth factorのm-RNAについては、いずれも明らかな変化を示さなかった。 サイトカインのm-RNAの発現は、多発性硬化症患者の病態を把握する上で鋭敏なマーカーになりうる可能性があり、今後症例数を増やしてさらに検討していく必要がある。
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