研究概要 |
侵襲を加えられたmotor neuronは,遺伝子転写を誘導するc-fos蛋白を発現し,それがandrogenとandrogen receptor(AR)の系により賦活されるという作業仮説をたて,以下の実験を行った。 成熟雄ICRマウスに一側の顔面神経・眼窩下神経の切断と一側の舌筋の圧挫を加え,1-4時間後深麻酔下で経心的に種々の固定液を灌流した.摘出した三叉神経節・脳の凍結切片で,抗c-fos蛋白抗体を用いた免疫組織化学を行った.その結果,c-fos蛋白は,4%パラホルムアルデヒド-2%アクロレイン固定により検出し得たが,motor neuronには発現しなかった. 一方,androgen receptor(AR)のneuron内の局在の報告は,細胞質あるいは核内とされているため,抗AR抗体による免疫組織化学を行った.その結果,脳幹のneuronでは,ARは細胞質に局在した.このようなneuronでは,androgen-AR複合体の核内への動員が少ないことを反映すると考えられ,それはneuronがandrogenを要求していることを意味すると思われる. 以上より,axotomyを加えたmotor neuronは,遺伝子転写を誘導する蛋白のうち,c-fos蛋白は発現せずc-jun蛋白のみを発現すると推定される.最近,このようなc-jun蛋白単独発現下では,ARはc-jun蛋白とdimerを形成することが示されている.これは,c-jun蛋白とARがsynergicに遺伝子転写を誘導する可能性を示唆する.そこで,axotomyを加えたmotor neuronにc-jun蛋白が発現する時,androgenが充分にmotor neuronに供給されるならば,ARが核内に局在を変えるという作業仮説をたてた.現在前記の方法で検討中である.
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