ヒトtyrosine hydroxylase遺伝子を精製しマウスの卵細胞に注入したトランスジェニックマウスと遺伝子操作をしていないコントロールマウスにMPTP(10mg/kg)を3回投与した。投与前後で行動を観察した。MPTP投与1週間後に脳を取り出した。脳を固定液(4%paraformaldehyde)に24時間浸け、その後30ミクロンの切片を作った。組織学的検討のためにcresy1 violet染色と抗tyrosine hydroxylase抗体を用いた免疫組織染色を行った。組織の検討は以下の様に行った。1。黒質のtyrosine hydroxylase(TH)陽性細胞数とcresy1 violet染色から神経細胞数を数えた。2。caudate-putamenのtyrosine hydroxylase染色切片の濃度を測定した。(結果)トランスジェニックマウスとコントロールマウスでMPTP投与による行動異常に差は無かった。組織検討の結果は1。黒質のTH陽性細胞数とcresy1 violet染色切片で観察した神経細胞数はトランスジェニックマウスとコントロールマウスで差が無かった。2。caudate-putamenのTH染色の濃度はトランスジェニックマウスに比べてコントロールマウスの方が有為に高かった。(考察)トランスジェニックマウスはコントロールマウスに比べて数倍TH蛋白量が多いことが分かっており、今回の結果から考察するとTH蛋白量が多くてもMPTP処理をするとTH蛋白量は低下し、コントロールマウス以下になるようである。今回の濃度測定は顕微鏡写真をフォトCDに取込みそれをコンピューターで処理したが、現在他の方法で濃度を再測定中である。TH蛋白量とパーキンソン病発症について今後さらに研究を進めていきたい。
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