研究概要 |
慢性進行性外眼筋麻痺を主徴とするミトコンドリア脳筋症(CPEO)は、これまで多数報告されているが、そのほとんどは孤発例である。われわれは、両親に血族結婚があり、妹にも同様の症状のあるCPEO例を経験し、患者と妹、両親に白血球のミトコンドリアDNAの多重欠失を見い出した。この家系で遺伝形式を確定するために、発端者の妹の子ども2人から末梢血を採取し、白血球DNAを抽出してミトコンドリアDNAの欠失の有無について調べた。発端者の両親と妹の2人の子は無症状であり、両親が血族結婚であることから、常染色体性劣性遺伝が最も疑われたが、妹の子2人には、白血球のミトコンドリアDNAの多重欠失は認められず、単純な常染色体性劣性遺伝ではないと考えられた。また、妹の子2人は20歳前後と若年であるため常染色体にコードされている遺伝子の異常により、若年ではミトコンドリアDNAの欠失は起こらないが、加齢によりミトコンドリアDNAの欠失が生じやすくなっているとも考えられた。 家族性ミトコンドリア脳筋症での常染色体にコードされている遺伝子異常についての報告はほとんどなく、ミトコンドリアDNAの複製に関与する因子の異常が想定されている。本研究では、一本鎖DNA結合蛋白を候補遺伝子と考えて,Xenopusの一本鎖DNA結合蛋白遺伝子の塩基配列をもとにして、DNA合成機によりオリゴヌクレオチドプローブを作成し、このオリゴヌクレオチドプローブを用いて、現在cDNAライブラリーのスクリーニングを行っている。
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