研究概要 |
当研究室では脳血管障害と血液血球成分との関係に着目し、赤血球凝集計を作製して(Am J Physiol 251:H1205-1210,1986)脳血管障害患者において赤血球の凝集能が亢進していること、またそれが数カ月間持続することを報告してきた(Stroke 20:1201-1207,1989)。一方白血球も脳血管障害の際に活性化され、それが数カ月持続するという報告がある。また、脳虚血実験において、虚血開始時期に白血球数を減少させるか、粘着物質を交代を用いて抑制するかしておくと脳虚血障害が著しく軽減されるという報告もいくつかある。当研究室でも血小板活性化因子-活性化白血球が短時間(10分以内)に培養静脈内皮細胞に粘着し、培養器からの剥離および収縮を引き起こすことを観察している。本研究は、白血球の活性度を測定する装置の開発を目標としているが、今年度はその前段階として、白血球の活性化が赤血球凝集能にいかなる影響を及ぼすかを検討した。健康成人肘静脈より採血し、抗凝固剤としてクエン酸ナトリウムを加え2つに分け、37℃で保温した。上記赤血球凝集計を用い赤血球凝集能(RBC-A)を測定した。まず、control stateでRBC-Aを測定後、一方には白血球活性化物質のphorbol myristatte acetate(PMA)2μg+dimethyl sulfoxide(DMSO)を含むリン酸緩衝液を加え、他方にはDMSOのみを含むリン酸緩衝液を加え37℃でincubateした。30分後にRBC-Aを再度測定した。PMA+DMSO添加群のRBC-Aは添加前0.088±0.019/s、添加後0.096±0.019/sであり、有意(p<0.01)に亢進していた。一方、DMSOのみの添加群では、添加前0.088±0.017/s、添加後0.081±0.020/sであり、有意な変化はみられなかった。以上より、PMAによる白血球活性化の際にRBC-Aが亢進することが明らかになり、今後、他の白血球活性化物質でRBC-Aに影響を及ぼさないものの検索または測定装置開発の際赤血球の影響を除外できうる機構を検討する必要のあることが示された。
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