ドーパが著効する遺伝性若年性パーキンソニズム症例中には、ジストニアが先行して出現する例(EOP-D)が散見され、同様の症状を呈する遺伝性進行性ジストニア(HPD)との発症機序における関連性が注目されている。我々は、最近Ichinoseらにより報告されたHPDのGTPシクロヒドロラーゼ I (GTP-CH I)遺伝子[第14染色体長腕に存在]突然変異を、EOP-D症例において検討した。臨床的に、当院通院中の若年性パーキンソニズム症例91例を検索したところ、EOP-Dは12例認められた。これら12例の白血球よりゲノムDNAを単離した後、GTP-CH Iの6つのエクソンをそれぞれPCRにて増幅した。PCR産物をアガロースゲルにて精製し、蛍光(FITC)ラベルしたオリゴヌクレオチドプライマーを用いてサイクルシークエンスを行った。塩基配列の解析にはALF DNAシークエンサー(Pharmacia)を用いた、また、脳内GTP-CH I活性の低下は髄液ネオプテリンの低下として反映されるため、EOP-D 3 例と対照18例の髄液ネオプテリンをFurukawaらの方法に準じて抽出し、高速液体クロマトグラフィー・蛍光検出器で定量した。結果、EOP-D症例では、GTP-CH Iのエクソン1〜6における突然変異は認められなかった。髄液ネオプテリンは、EOP-Dにおいて22.8±1.0pmol/ml(mean±SE)であり、対照の25.2±2.0pmol/mlと比較し有意差を認めなかった。EOP-Dの臨床所見はHPDと類似しているが、今回の検索により、その発症機序は異なるものである事が明らかとなった。現在、EOP-D症例におけるチロシン水酸化酵素遺伝子[第11染色体短腕に存在]異常の有無を検索中である。
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