研究概要 |
本年度においては、各年齢層の総計62人の正常被検者について、正中神経刺激SEPを記録し、これらの波形において13個の成分の潜時を読み取った。それらの潜時と各成分間の潜時差について、身長・年齢(一次と二次の項)・性の説明変数に対する重回帰を施行した。その回帰残差によって各成分の安定性を評価した。その結果、N9onset,N11′onset,P13/14onset,N20onsetの4個の成分が安定性が高く潜時評価における基準点として適しているとの結論を得た。これらの潜時・潜時差について、各説明変数を元に正常上限を求めることができるチャートを作成し、広く臨床応用に供することとした。この正常値は従来の方法(いわゆる中枢伝導時間)に比べてはるかに安定性が高いために、異常の検出率にすぐれ、臨床的有用性の高いことが予想されるものである。 各成分の起源については、変異の高いN11/P11成分はおそらく複合成分、N11′onsetは年齢との逆説的相関を示すことから正確には不明、P13/14onsetは大後頭孔付近、N20onsetは皮質への到達などと推定した。また、P13/14は3つのsubcomponentに分かれること、N20peakは最も変動性が高いがこれも3つのsubcomponentのうちのどれかがN20peakとなるために生ずることなども明らかにした。 臨床例については、頚髄疾患約40例についてのデータを得た。これらの結果について分析を行い、上記で確立された新しい評価法の優越性が実際の臨床データについても証明された。また、下位頚髄疾患においては頚髄後角由来のlcN13成分の振幅も有用なパラメーターであった。この最後の結果については現在投稿準備中である。
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