研究概要 |
我々は、砂ネズミの総頸動脈にPE-50カテーテルを用いて再現性よく内皮細胞障害に起因した血小板血栓を作成する方法について報告してきた。本研究では本モデルにおける血栓形成に如何なる因子が関与しているかを検討した。また血管内皮損傷の修復過程を明らかにする目的で、障害部位を電子顕微鏡を用いて経時的に検討した。 1)フリーラディカルによる血栓発現率への影響 血栓形成における化学物質の影響を検討する目的で、内皮細胞障害を作成する10分前に薬剤を投与して、障害作成後30分間顕微鏡下にて血栓が作成されるか否かを観察した。使用した薬剤はラディカルスカベンジャーであるCu-ZnSODである。投与量は4000,40000,400000units/kgおよび40000units/kg Apo SODである。SOD投与により血栓発現率は対照群に比し容量依存的に有意に抑制された。以上より、本モデルにおける血栓形成にはスーパーオキサイドの関与が重要な要因であるが示唆された。 2)内皮細胞障害の修復過程 実験動物を5群のグループに分けて、走査型電顕にて障害部位前後の血管表面の形態的変化を経時的に観察した。すなわち血栓形成直後群、1、3、7日後群、および6カ月後群である。血栓形成直後群では、障害部位に内皮細胞の剥離と平滑筋細胞の露出が観察され、剥離面に活性化された血小板による血栓形成が見られた。3日後にはfibrin networkを形成し、直後群より強固な血栓が確認された。7日後群では、血栓が消失していたが、内皮細胞は剥離したまま再生は認められなかった。6カ月群では血小板は全く認められず、一部内皮細胞の再生が認められたが、内皮細胞の剥離面が多く観察された。以上の結果より、本モデルにおける内皮細胞障害は従来報告されている内皮細胞の回復よりも長時間を要することが示唆された。
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