本研究の最終目標は高血圧における血管平滑筋のイオンチャンネルの変化を知ることである。今回、カルシウムチャンネルとATP感受性カリウムチャンネルを対象とし、実験を行った。1)カルシウムチャンネルの基本的性質の検討を行った。血圧調節に関係のあるモルモットの末梢腸間膜動脈の平滑筋を用い、そのカルシウムチャンネルに及ぼすジヒドロピリジン系、ベンゾチアゼピン系、フェニルアルキル系のそれぞれのカルシウム拮抗薬(ニフェジピン、ヘルベッサー、D600)の効果を比較検討した。3種類のカルシウム拮抗薬は電位に対する性質がそれぞれ異なり、この差がカルシウム拮抗薬としての効果の差につながっていると考えられた。また、カルシウム拮抗作用を有するとされるβブロッカーの塩酸ベタキソロールの効果も検討した。塩酸ベタキソロールもカルシウムチャンネルの活性を抑制した。この結果は平成7年日本循環器学会、平成7年日本薬理学会総会において発表予定であり、British J Pharmacolに論文が掲載予定である。2)我々は、Dahl食塩感受性ラットでは、食塩負荷により平滑筋細胞のカルシウムチャンネルの活性が増加することを見いだしているが、これが高血圧状態での血管への慢性的な圧負荷による2次的変化か否かについて、ヒドララジンを食塩負荷Dahl食塩感受性ラットに投与して検討を行った。ヒドララジンは血管を直接拡張させ血圧低下を起こすが、神経性・液性因子の異常は改善しないものと考えられている。慢性的なヒドララジンの投与を受けたラットでは、血圧は正常化していたが、カルシウムチャンネルの変化は改善しておらず、圧負荷ではなく食塩負荷に関連した何らかの因子がカルシウムチャンネルを変化させていると考えられた。この研究については現在論文を作成中である。3)更に、自然発症高血圧ラット(SHR)のATP感受性カリウムチャンネル(カリウムチャンネル開口薬の作用部位)が変化しているか否かについて検討を行った。SHRではカリウムチャンネルオープナ-のレマカリウムにより誘発されるカリウム電流がWKYに比較して減少していた。この結果は平成7年日本循環器学会にて発表予定である。
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