研究概要 |
高血糖は動脈硬化の促進因子であることは広く知られている。また高血糖は血管の内皮細胞および血管平滑筋細胞のプロテインキナーゼCを活性化し,血管の肥厚および再構築をきたすことが報告されている。 我々は培養血管平滑筋細胞を用いて,プロテインキナーゼCを活性化させる糖質コルチコイドがドパミン-Iレセプター反応を修飾することを報告した(文献1および第12回国際高血圧学会)。ドパミン-Iレセプター反応の研究は,昨年京都で開催された第5回国際末梢ドパミン会議にて,教育講演に選定された(文献2)。 また,我々は,自然発症高血圧ラット(SHR)の培養血管平滑筋細胞のナトリウム利尿ペプチドレセプター反応が,対照であるウィスターラットより低下していること,および高血糖状態にすることで,さらに反応が低下することを昨年大阪で開催された第8回国際SHRシンポジウムで口演発表した(文献3)。 高血糖がプロテインキナーゼCの活性化を介して血管平滑筋ナトリウム利尿ペプチドレセプター反応を減弱させることは,第9回ANP研究会で発表し,現在英文投稿中である。高血糖の血管平滑筋ドパミン-Iレセプター反応の修飾は,現在英文投稿中である。 以上のように,高血糖は血管平滑筋細胞上のレセプター反応を修飾することで動脈硬化の促進に関与する可能性が本研究において示唆された。今後さらに高血糖の動脈硬化促進の機序について研究を進めるとともに,種々の治療手段によって高血糖による動脈硬化を退縮させる方法およびその機序について研究を進めていきたい(平成7年度 一般研究(C)申請中)。
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