本研究の結果は次の通りである。 1、モデル作成及び心筋DNAの抽出; 4週令の雄性Wistar ratを用いてアドリアマイシン心筋ラットを作成。具体的には腹腔内に1mg/kg×5日/週×3週間投与し、さらに1週間後に心臓を摘出した。左室自由壁20mg^〜30mgを用いて心筋DNAを抽出し、templateDNAとした。また、同週令のコントロール群も作成した。 2、ラットミトコンドリアDNAに対するオリゴヌクレオチドプライマーの作成; ラットのミトコンドリアDNAは約16000塩基よりなり、これを約4等分する形でのPCRを想定し、合計8種類のプライマーを作成した(各20塩基)。 3、PCR法による欠失の検索; 各プライマーの組み合わせから、約4000塩基×4パターンのPCRを施工したが、この検索部位でのミトコンドリアDNA欠失は認められなかった。また、コントロール群も同様の結果であった。原因としては、心筋症モデルにおけるアドリアマイシンの負荷がまだ不足している可能性が考えられた。また、現時点では、DNA上のどの範囲で欠失が生じやすいのかは不明であり、他のプライマーの組み合わせによる検索も必要と考えられる。 4、ヒト剖検心筋を用いた検討では、生前アドリアマイシンの投与を受けた悪性腫瘍の症例で、心筋ミトコンドリアDNAの7.4Kbの欠失(D-loop領域とATPase6遺伝子の間)を認めた。
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