本研究では家兎を用いて、まず、交感神経刺激から心拍数変化までの動特性と、副交感神経刺激から心拍数変化までの動特性を求めた。続いて、副交感神経に定頻度刺激を加えた状態で、交感神経から心拍数変化までの動特性の変化を調べた。また、交感神経に定頻度刺激を加えた状態で、副交感神経から心拍数変化までの動特性の変化を調べた。 その結果、交感神経刺激から心拍数変化までの動特性は2次遅れ系のシステム、副交感神経刺激から心拍数変化までの動特性は1次遅れ系のシステムで近似できた。さらに、近似したシステムのパラメータを用いて、任意のパターンの神経刺激に対する心拍数の変化を相関係数0.8以上の精度で予測することができた。 次に、副交感神経を定頻度刺激した場合、交感神経刺激に対する心拍数の動的な応答が大きくなった。また、交感神経を定頻度刺激した場合、迷走神経刺激に対する心拍数の動的な応答が大きくなった。つまり、平均心拍数を指標にすれば、副交感神経活動は交感神経活動に対して抑制的に作用するが、動的な応答特性を指標にすれば、促進的に作用していることが分かった。同様に、平均心拍数を指標にすれば、交感神経活動は副交感神経活動に対して抑制的に作用するが、動的な応答特性を指標にすれば、促進的に作用していることが分かった。 従来、交感神経系と副交感神経系は心拍数制御に関して拮抗的に作用すると考えられてきたが、それは平均の心拍数に対する効果だけを述べたものであり、心拍数の動的な変化に着目すれば、交感神経系と副交感神経系は促進的に作用する場合があると言える。
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