研究概要 |
小児てんかん患児の大脳高次機能障害の原因を明らかにするために、抗けいれん剤の種類、画像診断、WISC-Rを主とした知能検査を検討し、以下の結果が得られた。 1.Carbamazepineの投与を受けた178例について研究した。4例(2.2%)で発作の増悪が認められた。そのうちの1例では、発作増悪時のIQ61(言語性IQ86,動作性IQ49)であったが,Phenytonに変更して発作がコントロールされた後ではIQ93(言語性IQ119、動作性IQ63)と著しく改善した。発作のコントロールが、大脳高次機能に及ぼす影響が著しいことを明らかにした(脳と発達1995;27:23-28)。 2.左頭頂部ニューロン遊走障害に伴う部分てんかんの患児において詳細な高次脳機能検査を行った。算数、構成、視覚記名などの頭頂葉障害を主とする高次脳機能障害が認められ、画像所見(MRI,SPECT)の異常部位と一致していた(脳と発達1995;印刷中)。 3.主幹脳動脈支配領域を一つ異常含む広範囲脳梗塞に伴う小児5例の臨床像を検討した。全例てんかんを合併し、0〜1歳に発症した4例は中等度以上の知的障害も合併していたが、2歳8カ月に発症した1例においては、MRI,SPECTでは左内径動脈領域の脳梗塞の所見が認められるのにも関わらずほとんど麻痺を残さず、発達指数86と良好であり、小児の脳障害に伴う可塑性が示唆された(北海道脳SPECT研究会記録集1994;2:20-22)。 以上のことから、小児てんかん患児において、てんかんをきたす中枢神経の基礎病態、障害部位のみならず、その発症時期、抗けいれん剤に対する反応が大脳高次機能の発達に影響を及ぼすことを明らかにした。
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