【研究背景】 多能性幹細胞が赤芽球系前駆細胞へ分化決定する過程において、組織特異的転写因子NF-E2が、重要な機能を果たしている。しかし、この因子は赤芽球系および巨核球系の細胞に発現が認められている。また、様々な実験結果から、赤芽球系および巨核球系の細胞は共通の前駆細胞から派生していることが示唆されている。しかし、各々の細胞系へ分化するメカニズムについては不明である。 【研究目的および計画・方法】 本研究の目的は:ヒトNF-E2の巨核球分化にともなうダウンレギュレーションのしくみ)明らかにし、巨核球分化の決定機構に関する知見を得ることにある。具体的には、第一に、NF-E2のダウンレギュレーションがタンパク質レベルにおいても起こっているかどうかを明らかにする。第二に、巨核球系細胞株に強制的にNF-E2を発現させた場合、分化誘導が阻止されるかどうかをみる。第三に、ヒトNF-E2の遺伝子をクローニングし、ダウンレギュレーションのしくみを分子生物学的に明らかにする。 【これまでの研究成果】 【1.巨核球分化にともなうNF-E2のダウンレギュレーションをRNAおよびタンパク質レベルで検索する】 遺伝子組み換え型NF-E2タンパクを作成し、これに対するモノクローナル抗体を作成した。これを用いて、免疫染色によりNF-E2タンパクを検出するのに成功した。また、ノーザンブロット法にて、7種類中6種類の巨核球系のcell lineにおいてNF-E2のダウンレギュレーションが起きていることを確認した。 【2.NF-E2の強制的な発現は巨核球分化を阻止しうるか?】哺乳動物細胞用発現ベクターを作成した。 【3.ヒトp45 NF-E2遺伝子の単離と発現調節機構の解明】1995年2月に、ヒトp45 NF-E2遺伝子の単離に成功した。 現在、塩基配列を決定しプロモーター・エンハンサー領域の検索を進めている。
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