【はじめに】白血球接着不全症(LAD)は先天性免疫不全症の一つで、CD18遺伝子の異常により白血球接着分子β2インテグリンの細胞膜への発現不全に伴う白血球機能の異常がその病態である。我々は1例の(LAD)症例のCD18について遺伝子解析をおこない、その遺伝子異常がアミノ酸置換(Pro178→Leu)を伴う1塩基置換(C605→T)と、mRNAの発現不全を伴う変異の複合ヘテロ接合体であることを既に明らかにした。今回その症例の末梢血中に正常にCD18分子を発現したCD3+CD8+CD57+リンパ球集団を見い出し、その集団について分子遺伝学的解析を行った。【方法】患者末梢単核球を免疫磁気ビーズで反応させ磁気装置を用いて非特異的付着細胞を除去、さらに陰性抗体であるB2D(細胞性腫瘍特異的抗体)を反応させ洗浄後、ビーズを加え同様の操作を行なった。その非付着細胞にF(ab)'2にしたMAY.035(CD11a)を反応させ洗浄後、1:4の免疫磁気ビーズを反応させた。磁気装置で分取された細胞を、さらに純度をたかめるため、F(ab)'2にしたMAY.0.17(CD18)でコートされた免疫磁気ビーズを反応させ同様に分取した。そのようにして得られた細胞よりtotalRNAを抽出、CD18cDNAを合成した後、C605→Tの変異を含む領域をCD18特異的プライマーを用いてPCR法により増幅し、そのダイレクトシーケンス法により塩基配列を決定した。【結果および考察】患者末梢血単核球1×10^7より前述の方法により純化された81個のCD11a/CD18陽性細胞が得られた。その細胞から合成されたCD18cDNAの塩基配列解析の結果、605番の塩基は変異のTであり、正常のCは認められなかった。この結果は再現性のあるものであった。以上の結果より患者におけるCD18陽性リンパ球は遺伝子レベルでは変異を有するものであった。今後は蛋白レベルに焦点をおいて患者CD18陽性細胞の解析を進めたい。
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