主要な末梢神経ミエリン蛋白として、P0蛋白、ミエリン塩基性蛋白(MBP)、PMP22蛋白、P0蛋白が知られる。近年、Charcot-Marie-Tooth病(CMT)やDejerine-Sottas病(DS)の中にP0蛋白やPMP22の遺伝子レベルでの異常が見いだされた。しかし、P2蛋白の異常が原因と考えられる疾患はまだ報告されていない。先天性末梢ミエリン低形成症(Congenital Hypomyelination Neuropathy:CHMN)はDS類似の疾患として位置づけられているがその原因はまだ解明されていない。私はCHMNの病因検討を進める中で、酵素抗体方でPo、MBP、P2の各蛋白の発現を調べ、P2蛋白の発現が特徴的に低下している事を見いだした。今年度は、さらにin-situ hybridization法でmRNAレベルでのP2遺伝子の発現を検討した。しかし、digoxigenin-labeled RNA probeを用いた高感度法にて、正常コントロールにおいても患者においてもP2 mRNAの発現は認められなかった。同時に行った、p0 mRNAのin-situ hybridizationでは患者でもコントロールでも発現を認めた。mRNAの発現による病態検索では有意な結果が得られなかったので、次の段階としてP2遺伝子の翻訳領域の遺伝子解析を患者において行った。しかし、患者でP2遺伝子翻訳領域の異常は認めなかった。極最近の論文でラットにおけるP2遺伝子の発現調節について、プロモーター領域に多段階よりなる特異的調節機構の存在を示す報告があった。従って、本疾患においては今後さらに、P2蛋白のプロモーター領域の検討を進める必要があると考えられた。 以上の研究結果は、現在'Journal of the Neurological Sciences'誌に投稿中。
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