本年度はコレステリ-ルエステル転送蛋白(CETP)活性の測定をアイソトープ法で行うための基礎的検討から開始した。小児の血液サンプルを測定するためには、微量検体で測定を行う必要があることが判明し、ベックマン社製Airfugeを用いて175μlの血清からリポ蛋白を除去後に透析して測定に供した。サンプル量は20μl/tubeであり、^<14>C標識HDL_3は20μl/tube(コレステリ-ルエステルとして6.8μg)、標識コレステリ-ルエステルの受容体であるd<1.063のリポ蛋白は40μl/tubeという少量で測定ができたので、経費の節約にもなった。持続携帯腹膜透析療法を受けている末期腎不全患児においては、著明な高脂血症とCETP活性の亢進が認められた。従来成人の血液透析患者ではCETP活性が低下しているか、インヒビターの存在のために生体内における活性が低下していると報告されているのとは異なる所見であった。CETP活性とHDL-CまたはHDL-C細分画の間には有意な相関関係は認められず、むしろ高脂血症との相関が注目された。すなわち特にLDL-CやTGの高値である症例ほどCETP活性も高く、CETPの高活性は動脈硬化促進的に作用している事を示唆する所見であった。一方、脂肪組織はCETPを多く含んでいることが判明しているが、当研究室の成績では現在までのところ、肥満児ではCETP活性の有意な変動は認められていない。また、健常成人と内分泌・代謝・栄養障害を認めない小児において、血清中のCETP活性には有意差が認められず、HDL-Cに明らかな年齢差・性差が認められることとは対照的な成績であった。年齢によるCETP活性の変動を明らかにするためには、今後より多数例での詳細な検討が必要であると思われた。インスリン依存型糖尿病患児においては、HDL_2-Cの高値が認められており、CETP活性が変動している可能性が高いので、今後サマーキャンプにおいて血液を採取して活性を測定する予定である。
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