1.目的 Alstrom症候群患者の糖尿病は著しいインスリン抵抗性を伴うが、その原因は不明である。我々は、本症患者2例より採取した培養皮膚線維芽細胞を用いて、インスリン刺激後のシグナル伝達を検討した。 2.方法 1)受容体インスリン結合能:^<125>I-insulinと抗インスリン受容体単クローン抗体を用いたRIA法で測定した。2)受容体β-subunitの自己燐酸化:インスリン刺激後抗インスリン受容体単クローン抗体で選別した受容体とγ-^<32>P-ATPを反応後、SDS-PAGEでβ-subunitへの^<32>Pの取り込みを測定した。3)PI-3Kの活性化:インスリン刺激後採取した細胞成分を抗IRS-1単クローン抗体で免疫沈降した後、PI及びγ-^<32>P-ATPと反応させ、生じたPI-3^<32>PをTLCで展開分離し、PI-3K活性を測定した。 3.結果 1)受容体インスリン結合能は、症例1で8.0±1.2(n=3)、症例2で11.0±2.6X10^<-13>mmol/mgprotein(n=3)であり、正常対照(10.0±2.2.n=8)と差はなかった。2)β-subunitの自己燐酸化は2症例及び正常対照共に、10^<-9>Mのインスリン濃度からみられ、10^<-7>Mで最大となった。3)インスリン刺激後のPI-3K活性の変化は少なかったが、正常対照に比して2症例において活性が増加する傾向がみられた。 4.考案 本症患者のインスリン受容体機能は正常であることが証明され、本症における著しいインスリン抵抗性は、細胞内シグナル伝達経路の異常によることが考えられた。細胞内で分岐するシグナルの内、糖輸送に関係すると考えられているPI-3Kの活性化は皮膚線維芽細胞では弱いため、評価が難しく、今後、MAP kinaseの活性化など他のシグナル伝達経路を含めて検討する必要がある。
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