川崎病は乳幼児の新しい血管炎症候群であり、特に冠動脈に冠動脈炎をきたし、動脈瘤や血栓性閉塞を伴うことがあるために注目されている疾患である。川崎病では急性期血小板増加のみられることが多いが、この血小板は生体内平均寿命も短いため、病態の生じた時点での細胞状態を反映していると考えられた。血小板は血管平滑筋と同様にCaイオン依存性の収縮機構を持つことがわかっているため、川崎病患児の血小板Caイオンを測定することで血管平滑筋のCaイオンを推定し得ると考えた。血管平滑筋のCaイオンが低下していれば、血管収縮作用が減弱することが予測され、それによって冠動脈瘤の形成がされるものと予測されたが、現段階ではまだ十分な結果は得られていない。理由は以下の如くである。 1.同一のコントロール検体で血小板回収率を安定させ、ほぼ一定の値を得るのに習熟を要すること。 (川崎病患児の検体を一度にまとめて測定するわけにはいかないので、コントロールを安定させた上でその都度コントロールと比較し、補正する必要がある。) 2.関連病院に依頼して検体を得るため、採血から血小板分離までの時間による変動の要素を考慮する必要があり、そのために検体が得にくい難点がある。 現在同一健康成人の血液を用いてデータの安定を計っており、その上で実際に川崎病患児の検体、同一年令のウイルス感染者の検体を用いて測定を行うこととしている。実際では毎回微妙に条件が違うため、同一健康成人の検体もその都度測定し、補正する必要があると考えている。
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