ミトコンドリア異常症では1人の患者で変異遺伝子がヘテロプラスミ-に存在し、その割合が症状発現の重要な因子である。1細胞での変異遺伝子の量及び分布を知ることは、変異遺伝子量と細胞障害性の発現との関連、さらに分配形式を知る上で重要である。今年度、細胞ごとの遺伝子型を解析する方法を検討し、変異遺伝子の細胞レベルでの分布を明らかにした。11778変異をもつLeber病大家系の2人の白血球より抽出したDNA(変異遺伝子の割合はそれぞれ80%と50%)を1μgから0.1pgまで段階希釈し、2段階のPCR法(25cycle×2)にて変異遺伝子を含むDNA断片を増幅、制限酵素で切断後アガロースゲル電気泳動後解析した。1μgから1pgまでは、バンドが認められ、変異遺伝子の割合はそれぞれの患者につき全サンプルで同じであった。このことは1細胞のmtDNAを解析することが可能である。また少ないコピー数を2段階PCR法で増幅してもアーチファクトが生じないことを示している。 血液より分離した白血球は十分に希釈し、培養皿に移した後上澄みを取り替え洗浄し、micromanipulation法にて1細胞ごとに分離した。この方法により細胞浮遊中のDNA混入をなくすることが出来た。80%の割合で変異を認めるLeber病の患者の白血球25細胞を解析した。16細胞は変異mtDNAのみ、5細胞は正常mtDNAのみで、21/25は細胞内ホモプラスミ-を示した。Leber病の白血球では、細胞分裂に伴い2種類のmtDNAは一方のmtDNAをもつように両方向性分配されていくと考えられた。これはこの変異の白血球における細胞障害性が強くないからかもしれない。この結果は細胞分裂の頻度や1細胞あたりのmtDNAコピー数が個となる他の組織、あるいは他のミトコンドリア異常症では異なるものと考えられる。今後、この方法を培養細胞系に応用し、細胞内の2種類のmtDNAの動きやそれに影響を及ぼす因子について検討する予定である。
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