我々は、心室中隔欠損患児において、経時的に収縮末期壁応力を指標とした後負荷と左室内周短縮速度を指標とした心収縮力の関係を観察することにより、血管拡張剤renin-angiotensin converting enzyme阻害剤(Enalapril)の小児の左右短絡性疾患における有用性と適応に関する検討中である。 検討は、軽度の肺高血圧を伴う中等度の心不全患児に関し強心剤・利尿剤に加える形で、Enalaprilを開始した。Enalapril投与開始前、心エコー上、左室拡張末期径と左室収縮末期壁応力は有意に増大していたが、左室円周短縮率と左室内周短縮速度は正常範囲であった。多呼吸、陥没呼吸、体重増加不良といった心不全症状と心拡大を認めた。また、血漿Angiotensin2濃度は有意に上昇していた。 0.2mg/kg/dayのEnalapril投与開始後、血漿Angiotensin2濃度は有意に低下した。有意な血圧の変動は認めず、心エコーのパラメーターも変化しなかった。臨床症状と胸部レ線上の心拡大、肺うっ血の軽減は症例によりばらつきがあったが、有意な改善は得られなかった。症状の改善が得られず、根治術に至った症例も認められた。 副作用に関しては、有意な血圧の低下、心拍数の上昇は認めなかった。また、白血球減少、皮疹、咳嗽を認めなかった。 Enalaprilは、0.2mg/kg/dayの投与により十分な血中濃度が得られると考えられた。しかし、短期的には、臨床症状、心エコー上の変化は確認できなかった。 副作用が認められなかったことからも、より軽症の心不全患児に対しての強心剤、利尿剤に変わる形での投与を検討した上で、以上の内容を投稿する予定である。
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