1)臨床症状の検討:当院心臓外来で経過観察中のMarfan症候群患者15例(男6例、女9例、年齢3-24才)について、臨床症状を以下の点を中心に調査した;身長、体重、アームスパン、蜘蛛指、wrist sign、thumb sign、脊柱側弯、胸郭変形、水晶体亜脱臼、心血管疾患、気胸、鼠径ヘルニア、その他の奇形。主な結果は以下の通りである;全例でアームスパンは身長より長く、脊柱側弯または胸郭変形を認めたが、その程度は様々だった。水晶体亜脱臼は9例(60%)に認められた。心血管疾患は僧帽弁逸脱10例、僧帽弁閉鎖不全8例、大動脈弁閉鎖不全3例、大動脈拡張9例だった。気胸を4例、鼠径ヘルニアを2例で認めた。この結果は本研究の基礎的データとなる。2)遺伝子変異の解析:上記15例中6例の末梢血単核球からDNAを抽出した。そのうち3例について、2つのアプローチで遺伝子解析を行った。(1)遺伝子部分欠失、部分重複といった比較的大きな変異を検出するために、fibrillin遺伝子cDNAをプローブにして、長いDNA断片の分解能を高めるために独自に考案した。“一本鎖DNA電気泳動法"を応用したサザンブロット解析を行なった。(2)点突然変異のような微小な異常を検出するために、患者遺伝子を部分的にPCR法で増幅し、SSCP法でスクリーニングした。まだ巨大なfibrillin遺伝子の全領域を解析できていないため、現在までのところ遺伝子変異は検出されていないが、遺伝子全領域にわたる解析が行われれば、何らかの遺伝子変異が検出できると考えられる。今後残る領域の解析を進めていくとともに、すでにDNAを抽出した3例、およびその他の9例についても同様の解析を行っていく計画である。
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