全身性壊死性血管炎は最近まで臨床的に有用なマーカーがなく、その診断は症状に基づいてなされてきた。しかし1985年にウェージナ-肉芽腫症において抗好中球細胞質抗体(Antineutrophil cytoplasmic antibody;ANCA)が患者血清中に出現することが報告されて以来、欧米で精力的に研究が行われANCAが血管炎の診断のみならず、病因の解明に役立つものとして注目されている。しかしこのANCAが血管炎において単に二次的現象で患者血清中に出現する自己抗体なのか、病因的役割を有するのかはまだ十分には解明されていない。 そこでANCAが好中球を刺激して血管内皮細胞障害を起こす機序を明らかにすることを目的とした。 【対象】今までの我々の研究で採取、保存してあるANCA陽性の患者血清を以下の実験に用いた。 【方法】ANCAによる好中球の活性化を証明するために以下の実験を行った。 ANCA陽性血清と正常ヒト血清を、正常ヒト末梢血から分離した好中球と反応させ、メディウム中に放出される好中球からの活性酸素およびロイコトリエン量を測定した。活性酸素放出量は好中球のH_2O_2産生量をフローサイトメトリー法で、またロイコトリエン産生量は高速液体クロマトグラフィー法で検討した。 【結果】ANCAを含む血清は、ANCAを含まない血清に比べて、明らかに好中球からの活性酸素およびロイコトリエン産生量を亢進させた。 【考案】血管炎患者血清中のANCAは、好中球を刺激して組織障害性のある炎症惹起物質の産生を高めていると思われる。
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