研究概要 |
腎臓移植および自家造血細胞移植の導入により難治性小児癌に対して超大量化学療法が可能となり治癒率の向上が期待されている。しかし現在行われている移植の方法では大量の造血幹細胞を採取しなければ成功せず、これに伴う多くの問題が指摘されている。もし充分な量の造血幹細胞をin vitro,in vivoで増幅することが可能となれば移植方法の簡略化、患者およびドナーの負担の軽減、移植適応や対象の拡大に多大な貢献をすると考えられる。まず正常人末梢血および骨髄の単核球とjuvenile chronic myelogenous leukemia(JCML)患児の単核球とのin vitroでの分化増殖能力の違いを検討した。Growth factorとしてGM CSF(0,0.1,1.0,and 10ng/ml)のみを含む20%FCS,0.9%methycelluloseの半固形培地でgramulocyte-machrophage progenitors(CFU-GM)の数を検討したところ、正常人末梢血および骨髄の単核球では10ng/mlのGM CSF濃度でのみコロニーの形成を認めた(末梢血<骨髄)が、JCML患者末梢血の単核球ではGM-CSFを含まない培地でも多くのCFU GMコロニーの形成を認めた。しかし、JCML患児末梢血の単核球をmedium中で2時間培養し付着性の細胞(monocytes)を除去したところ、低濃度のGM CSFの条件下でのコロニー形成能は認められなかった。これらの結果は単球により産生されるサイトカインが造血細胞の分化増殖に重要であることを示唆し、正常骨髄幹細胞とJCML細胞の性質の違いを検討することにより造血幹細胞分化増殖のメカニズムをより明らかにできるものと考える。今後、種々のサイトカインを組み合わせて投与することにより、in vitro,in vivoで造血幹細胞の増幅に適した条件を検討する。
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