研究概要 |
ポリエチレングリコールを用い細胞融合法により作製されたマウス大脳中隔由来の幼弱ニューロンSN49に低酸素負荷を与え,細胞障害性と細胞死の機序を検討した. 低酸素条件は真空デシケータ内の窒素ガス充満により作成し前値の約50%と軽度であったが時間依存性にSN49は死滅し,親細胞であるN18TG2はより抵抗性を示した.SN49はABC法による免疫組織染色はCholine acetyltransferase,200K Neurofilament(NF)抗体が胞体,神経突起が明瞭に染色され,比較的分化したニューロンと思われた.細胞数が60%に減少した負荷後24時間でNFに対する染色性はコントロールに比べ低酸素負荷群で染色性低下細胞が多い傾向があった.光顕的には空胞含有細胞の増加,神経突起をもつ細胞の減少もみられた.細胞質内の変化は負荷後6時間より電顕的にも確認され,ミトコンドリアの膨化,細胞内小器官の消失がみられた.これらの所見は本細胞の死滅機序がアポトーシスよりもネクローシスによるものを示唆した.細胞死直前の細胞内DNAの抽出後電気泳動したがDNA断片化はみられなかった.cAMPや神経栄養因子は低酸素性変化を予防不能であった. 今後,低酸素負荷早期の細胞および神経突起の詳細な形態変化やNF蛋白量の変化を生化学的あるいは分子生物学的に検討する必要があるが,乳酸やエンドトキシンなどの細胞傷害因子による神経細胞死の状態を形態的あるいは分子生物学的に検索する必要があると思われた.
|