アトピー性皮膚炎(AD)の発症、重症化、難治化には様々な要因がかかわると推測され、特にバリア機能低下、感染防御能低下などの皮膚固有の機能の障害に代表される生理学的異常と外来抗原に対する抗原提示能の亢進、血中IgE上昇や末梢血T細胞の活性化などの免疫学的異常が、その要因として複雑にからみあうと考えられている。今回の研究ではその両面からアトピー性皮膚炎の病態を解明しようと試みた。 (1)生理学的異常に対する検索:皮膚表面及び粘膜表面のsIgA量を測定し、AD患者の易感染性について検討した。いずれもAD患者では有意に低下していた。従って、AD患者では感染防御の第一線となるsIgAが減少し易感染性のひとつの要因であると推測した。 (2)免疫学的異常に対する検索:まずAD患者の単球についてその表面マーカー第XIIIa因子についてADと健常人を比較すると、末梢血中の単球では両者の陽性率に有意差はみられなかった。真皮内で比較すると本症の紅斑型の病変部は健常人皮膚と比較して陽性細胞の増加はなかったが、ダニパッチテスト陽性部位では著明に増加していた。また痒疹型の病変部では陽性細胞が増加していた。以上の事はAD患者ではIgE上昇に伴ってI型アレルギーが優位な群とIV型アレルギーが優位な群、両者とも上昇している群に分別されるという以前の結果の傍証となる考えた。次に、免疫学的異常の観点でT細胞のサイトカイン産生能が検討した結果、IL-1の産生能がAD患者では上昇していた。また正常皮膚ケラチノサイトをADT細胞培養上清で刺激するとケラチノサイトの増殖が促進され、IL-1産生が増加した。しかしIL-6産生は増加しなかった。現在はサイトカイン産生についてmRNAレベルで検討中である。
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