エピリグリンは1991年、発見された皮膚基底膜部の細胞外マトリックスであり、インテグリンのリガンドとして基底細胞と基底板の間の接着に関与していると考えられている。近年、瘢痕性類天疱瘡の患者血清中に、この物質に対する自己抗体を有するものが報告され、自己抗原の一つとして注目を集めた。今回、この患者血清を用いて凍結固定、凍結置換を用いた包埋後免疫電顕法を施行した。その結果、自己抗体の正常ヒト皮膚における結合部位は皮膚基底膜部の透明層下端部で基底板に近い部分であることが明らかとなった。その沈着はヘミデスモゾームの直下で多く観察され、エピリグリンとヘミデスモゾームの関連が示唆された。また、同じ血清を用いて正常ヒト皮膚凍結超薄切片にて免疫電顕法を施行したが、抗原性の保持はよいものの形態保持が悪く、バックグランド染色も強いため、包埋後免疫電顕法の結果以上のものは得られなかった。また、抗エピリグリンモノクローナル抗体であるGB 3を用いて同様に免疫電顕を施行したところ、やはり、皮膚基底膜部の透明層の最下端部に結合がみられ、透明層と基底板の境界部にそのエピトープが存在すると考えられた。また、抗α6インテグリン抗体であるGOH3を用いて免疫電顕を施行したところ、そのエピトープは基底細胞へミデスモゾームの細胞膜に沿って透明層の上端部に存在することが明らかとなった。以上の結果より、エピリグリンは主として透明層のヘミデスモゾーム直下に存在し、患者血清中の自己抗体の標的となり得ること、自己抗体のエピトープはGB 3抗体のエピトープと近い位置にあること、また、α6インテグリンのリガンドとして機能し得るがそのためにはエピリグリン分子は透明層を横断して存在すべきであることが推定された。
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