研究概要 |
皮膚リンパ種はいわゆる節性リンパ種と異なり、独特の生物学的・臨床的特徴を持つ。皮膚炎症性疾患のうち一部のものは慢性に経過する過程で、悪性リパ腫(皮膚型)へと移行することが知られているが、これらは長期間かけて移行するので、移行の時期を正確に把握するのは困難である。これまで皮膚生検組織の病理学的検討が最も重要視されてきたが、リンパ種様丘疹症など既成の概念にあてはまらぬものや、病理学的所見が得られてからの治療開始では遅すぎるとの考え方もある。いずれにせよ、臨床的に悪性リンパ種を早期に診断することは治療上非常に重要で、患者の予後を決定する第一の因子といっても過言ではない。本研究において、リンパ種の研究面で頻用されていた免疫組織学および分子生物学を、非常に幅広く客観的に捕らえにくい皮膚慢性炎症性疾患の臨床に応用し、成果の一部は報告済である(Kikuchi A,J Am Acad Dermatol 29:419-22,1993.)。 斑状類乾癬、毛包性ムチン沈着症、リンパ種様丘疹症など、皮膚炎症性疾患のうち特に悪性リンパ種への移行頻度の高い疾患群において、それぞれ臨床所見、治療に対する反応性および経過、病理所見、免疫組織学的所見、分子生物学的所見につき詳細な検討を行った結果、慢性炎症疾患から皮膚リンパ種への移行は長期間を経て連続的に起こるので、臨床所見、病理所見、分子生物学的所見などの総合的判断によってなされるべきであると考えられた(菊池 新,慶應医学 72:1-7,1995)。また前リンパ種状態において、浸潤細胞のモノクロナリティが検出される症例があり、この場合臨床所見、病理所見のみからこれらを皮膚リンパ種と鑑別することは困難であり、注意深い経過観察と、頻回に皮膚生検により診断を確定することが重要と結論した(Kikuchi A,Dermatology 190:124-127,1995.)
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