最近我々はデスモソーム成分の一つであるデスモグレインが、接着因子として知られているカドヘリンファミリーに属すること明らかにした。更にその後モノクローナル抗体を用いて、今までに知られていなかった角化上皮型デスモグレイン(以下kDGと略す)が存在すること報告した。そこでこのkDGと落葉状天疱瘡抗原との関連を検索することを目的として、kDGのcDNAをクローニングすることを試みた。具体的には、表皮より作成したλgt11ライブラリーを大腸菌Y1090に接種した後LBプレート上に散布・増殖させ、これをニトロセルロース膜上に転写し抗体と反応するプラークを分離する。更に単一プラークを分離できるまでこの操作を繰り返した。上記の型どうりの手法により、モノクローナル抗体により特異的に認識されるプラークを分離し、3っつのクローンを得た。 現在、これらのクローン遺伝子配列を検索することを急いでいる。これより得られる遺伝子配列が、既に報告されているデスモグレインのそれと完全には一致しないが或る程度のホモロジーを示した場合、kDGの存在が確認されるわけである。しかし一般にλgt11ライブラリーのインサートは2kb以内であり、またデスモグレインcDNAの全長は5kbを超えるので、この配列はデスモグレイン分子の一部、特にその細胞外領域の配列を示すにすぎない。そこで、他の領域を含むcDNAを分離するため、既に得られたcDNAの両端を切り出し、これをプローブとして用いて再びライブラリーをスクリーニングする。こうして分離されたクローンを再び上記の如く処理し、cDNAの全長の配列の情報が得られるまでこれを繰り返す。以上に述べたkDG遺伝子の全塩基配列解明の試みは、一連の落葉状天疱瘡抗原に関する研究計画の端緒となるものであろう。
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