研究概要 |
はじめに 皮膚神経線維腫(NF1)は,皮膚神経線維腫,カフェオレ斑,虹彩小結筋,脳脊髄腫瘍,骨変化など多彩な症候を特徴とする優性遺伝性疾患で,1990年にその遺伝子はクローニングされNF1遺伝子は17q11.2に座位し,その蛋白はneurofibrominと命名されている.しかし,その症状発生機構に関しては未だ不明な点が多く,これまで神経線維腫の正常対立遺伝子に異常を起こしているという報告やneurofibrominが低下したという報告もない.また,NF1遺伝子の変異のポットスポットも認められていない.そこで今回,抗NF1-GRD(GAP-related domain)抗体を用いて免疫組織化学的に神経線維腫におけるneurofibrominの局在について検討し,さらにNF1cDNAを用いたin situ hybridization法によりNF1mRNAの局在についても検討した. 材料および方法 NF-1に生じた神経線維腫20例,正常皮膚5例,皮膚線維腫5例,尖圭コンジローム2例およびミルメシア2例について 10%ホルマリン固定パラフィン包埋切片,および凍結切片を用いて検討した.使用した抗体は,neurofibrominに対する抗NF1-GRD抗体でベクタステインABCキットを用いて免疫組織学的検索を行った.また,NF1mRNAの局在に関してはユタ大学Viskochilから分与されたNF1cDNA(10kbp)をプローブとしてDNAおよびRNA color kit(Amersham LIFE SCIENCE)を用いてin situ hybridization法を行った.なお,対照としてHPV-1DNA(8kbp)をプローブとしてミルメシアのHPV-1mRNAの局在を調べた. 結果 1)抗NF1-GRD抗体に対する反応性について 100倍希釈から1200倍希釈までの各種濃度で検討したが,神経,表皮細胞を含めた正常皮膚,神経線維腫,皮膚線維腫,ミルメシア,尖圭コンジローム全例においてNF1-GRDの発現は認められなかった. 2)NF1mRNAの局在について HPV-1DNAをプローブとしたHPV-1mRNAの局在はミルメシア病変部の有棘層の細胞質ならびに核に認められた.しかし,NF1cDNAをプローブとしたNF1mRNAの局在は神経線維腫,神経および表皮細胞を含めた正常皮膚のいずれにおいても発現は認められなかった.
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