研究概要 |
乾癬は、ケラチノサイトの非腫瘍性増殖と真皮の炎症を特徴とする炎症性角化症であり、その治療薬剤として、ステロイドの他にレチノイド、免疫抑制剤、活性化ビタミンD_3などがある。これら薬剤のケラチノサイト増殖抑制機構を解明する目的で、以下の実験を行った。 方法;正常ヒトケラチノサイトを7×10^5/mlの密度で無血清培地中にて2日間培養し、(1)各種ビタミンD_310^<-10>M,10^<-8>M,10^<-6>M (2)retinoic acid 10^<-10>M,10^<-9>M,10^<-8>M,10^<-7>M(3)メソトレキセート10^<-10>M,10^<-8>M,10^<-6>M(4)FK506 10^<-10>M,10^<-8>M,10^<-6>Mをそれぞれ添加して24時間反応させた後、IL-1β 10ng/mlを添加して増殖刺激を行った。24時間反応後のケラチノサイト増殖活性を^3[H]-thymidineの取り込みにより測定した。また、培養上清中に含まれるTGFα,TGFβをELISAにより測定した。結果;(1)活性型前駆体である1α-(OH)ビタミンD_3添加では、^3[H]-thymidineの取り込みに変化はみられなかった。他の各種活性化ビタミンD^3添加では、10^<-7>Mで最大の60〜75%の取り込み抑制が認められた。(2)retrinoic acid添加では、10^<-10>Mでcontrol levelであったが、10^<-8>Mでは2.4倍、10^<-7>Mでは5.2倍の取り込み増加が認められた。(3)メソトレキセート・(4)FK506添加では、^3[H]-thymidineの取り込みに変化はみられなかった。また、培養上清中にTGF-α,TGF-βはすべてにおいて検出できなかった。以上より、活性化ビタミンD_3はIL-1βで刺激されたケラチノサイトの増殖を抑制し、その効果は10^<-7>M付近で最大であること、retinoic acidでは10^<-8>〜10^<-7>Mでむしろ増殖促進的に作用すること、メソトレキセート・FK506では10^<-10>〜10^<-6>Mで直接ケラチノサイトの増殖を調節しないことが示唆された。また、培養上清中にTGFα,TGFβが検出できなかったことについては、培養細胞密度が低すぎた可能性が考えられ、再検討を要すると思われた。
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