副腎皮質ホルモンの皮脂腺に及ぼす影響に関しては、現在に至るまでグルココルチコイドに関してのみ2、3の報告があるにすぎない。1959年にStraussとKligmanは、思春期前の男性がグルココルチコイド(ハイドロコルチゾン)を投与されたのち、皮脂腺の肥大がみられたことを報告している。また副腎機能不全の患者では皮脂分泌が減少していることより、患者にグルココルチコイドを投与したところ、グルココルチコイドは皮脂分泌に影響を及ぼさなかったことが1963年にPochiらにより、また1974年にはGoolamaliらにより報告されている。この結果は、副腎機能不全の患者での皮脂分泌の減少が、副腎性男性ホルモンの減少によるものである可能性を示唆するものと考える。さらに、ラットにグルココルチコイド(コルチコステロン)を投与しても、皮脂分泌には影響を与えなかったという報告が1974年にShusterとThodyによりなされている。副腎皮質ホルモンが皮脂腺に対して影響を及ぼすか否かについては、これらの報告だけでは不明確である。そこで今回われわれは、ヒトより分離した皮脂腺を組織片培養して得られた培養脂腺細胞を用いて、グルココルチコイド(ハイドロコルチゾン)の培養脂腺細胞の増殖に及ぼす影響をin vitroで検討した。その結果、グルココルチコイド(ハイドロコルチゾン)は培養脂腺細胞の増殖を濃度依存性に、有意に増加させることが判明した。この結果はin vivoにおいてグルココルチコイド(ハイドロコルチゾン)が皮脂腺に対して直接的な影響を及ぼしている可能性を示唆するものと考える。培養脂腺細胞の脂質合成に及ぼすグルココルチコイド(ハイドロコルチゾン)の影響については、現在検討中である。
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