ヒト正常表皮細胞を種々の真皮モデル上で重層培養することによって、再構成皮膚の作製を試みた。真皮モデルとしては(1)ヒト線維芽細胞含有コラーゲンゲル、(2)ヒト血管内皮細胞含有コラーゲンゲル、(3)細胞不含コラーゲンゲル、(4)ヒト線維芽細胞含有アテロコラーゲンスポンジ、および(5)エラスチン-フィブリン構成人工膜を用いた。 (1)、(2)のコラーゲンゲル三次元培養では、ヒト線維芽細胞、ヒト血管内皮細胞とも正常真皮内における形態に類似し、良好な増殖が認められたが、(4)コラーゲンスポンジ内でのヒト線維芽細胞の増殖は観察されなかった。 次に各々の真皮モデルにヒト正常表皮細胞を播種し、その増殖、分化を検討した。(1)、(2)、(3)のコラーゲンゲル上では表皮細胞は敷石状のコロニーを形成し、次第に細胞は偏平化し始めコロニーは増大し、やがて分化、重層化が進行した。(4)、(5)では表皮細胞は接着せず、表皮シートは形成されなかった。 組織学的検討では、(1)(3)のコラーゲンゲル上に1〜2層の表皮細胞が広かっており、表皮細胞播種後2週目には重層化が顕著で5〜7層の表皮層様構造を呈したが、(3)細胞不含コラーゲンゲルではその表皮シートの形成は(1)線維芽細胞含有コラーゲンゲルに比して遅延した。また、ラミニン、IV型コラーゲン、ファイブロネクチン、類天疱瘡抗原などの基底膜構成成分は表皮細胞とコラーゲンゲルとの境界部、基底膜に相当する部位に線状の発現を認めたが、(3)細胞不含コラーゲンゲルではその発現まで日数を要した。 コラーゲンゲル上で正常ヒト表皮細胞を培養することによって再構成皮膚を作製することが可能であり、表皮細胞と真皮成分である線維芽細胞、血管内皮細胞との相互作用が示唆された。
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