今回の実験にあたり、まず従来の経頚静脈性肝静脈門脈短絡術(TIPS)に用いられる10Fシステムより細いシステムの開発に着手した。素材や穿刺針、シースを特別に発注し、組み合わせることで有効に穿刺可能な7Fシステムを手にいれることができた。これは従来のシステムに比べ断面積では約1/2であり、犬の実験で使用可能だったばかりではなく、小児でも十分に使用可能な太さと考えられる。ただしこのシステムはトルク性にやや問題が残り、肝移植前の門脈本幹開存や出血のコントロール目的の小児へのTIPSの導入のために、シース素材をもう一段検討しているところである。 TIPSの照射実験には犬を用いたが、実験当初は人間成人に比べ視野が狭く、X線設備も不十分等の技術的問題や感染の合併等の問題があり、実験計画の遅れと有効実験件数の減少を招いている。三ヵ月までの経過観察では、コントロール群に比べ照射群では、照射により肝細胞の増殖および内膜の肥厚とも抑制されている印象(肉眼および剖検組織観察)で、予想に沿う結果と考えている。現在、より長期の経過観察を行っているところであり、また早期の観察数を増やすべく実験に取り組んでいるところである。今後長期の経過観察が終了した段階でデータをまとめるつもりであるが、本実験の発展的実験として内膜増殖抑制遺伝子感作による(TIPSの手技を用いて、バルーン閉塞下に抑制遺伝子を感作させる)血管内膜増殖抑制の実験を立案、計画中である。
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