研究概要 |
腫瘍の照射直後の高エネルギー燐酸代謝と細胞障害とくに放射線誘発アポトーシスとの関係を明らかにするため,5週令のC57/BL雄性マウスの背部皮下に,EL4細胞を移植し7日後に照射を行い,直後から^<31>P-MRS測定をおこなった.測定はOxford Instruments Limited社製のGSX270(静磁場強度6.34T)を用いた.照射線量は0,3,10,30Gyで腫瘍部への限局した照射とした.^<31>P-MRS測定は照射直前,照射4,8,24時間後に行った.測定されたスペクトルのピーク面積を算出しβ-ATP/Piの経時的変化を観察した.病理組織学的なアポトーシス細胞の頻度は照射後4時間が最も高く,以後時間の経過とともに減少した.アポトーシス細胞の出現頻度は線量に依存しており4時間後では30Gy:45%,10Gy:35%,3Gy:20%であった.照射24時間後で比較すると3Gy後の組織ではアポトーシス細胞は認められなかったが、30Gy後の組織ではなお残っていた.β-ATP/Piはアポトーシス細胞が最も高頻度に現れる4時間後には10Gy,30Gy後で低下した.この変化は線量に依存し10Gyよりも30Gyでβ-ATP/Piの低下が明らかであった.照射24時間後にはいずれの線量でもコントロールにくらべβ-ATP/Piは高値を示した.この変化は線量と逆相関を示し3Gyでβ-ATP/Piは最も大きく,10Gy,30Gyの順に小さくなった。 アポトーシスが組織学的に最も高頻度にみられる時期にはβ-ATP/Piは組織全体としてはやや低下を示し,アポトーシス細胞の吸収排除に伴って上昇した.今後は他の刺激(化学療法剤,ステロイド等)によるアポトーシスと^<31>P-MRSによる高エネルギー燐酸の変化について検討をかさね,アポトーシス時の燐酸代謝の変化について検討をかさねたい.
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