研究概要 |
頭蓋内動脈は、通常vasa vasorumを持たないが、動脈硬化等ではそれが発達する。in flowの信号を抑制した高分解能MRIでは頭蓋内動脈壁自体の造影効果が見られることがある。今研究は、この動脈壁の造影効果について、まず椎骨動脈に注目して検討した。 対象は種々の理由で頭部造影MRを依頼された21-93歳の患者29名である。1.5T MRIを用いて、後頭蓋窩下部の高分解能T1強調像(SE600/15,FOV15cm,slice thickness 3mm)を造影後に施行し、頭蓋内椎骨動脈壁の造影効果を検討した。スキャン範囲下方にpresaturationをかけて動脈内の信号を減じた。椎骨動脈壁の造影効果をstage1(造影効果なし)、stage2(軽度の造影効果)、stage3(明瞭な全周性造影効果)に分類し、年齢との相関を見た。 stage3の造影効果は10名(平均74.2歳)で認められ、stage1(8名:平均56.4歳)に比し有意に年齢が高かった。またstage3の患者は何らかの脳血管障害の既往をもっていた。 頭蓋内動脈壁の造影効果は動脈硬化によるvasa vasorumなどの血管増生を見ていると考えられ、動脈硬化の比較的初期の変化がMRIで観察できることを示した。また通常の読影において、動脈壁の造影を いわゆるarterial enhancementや、解離性動脈瘤と混同してはならない。さらに、今後中大脳動脈などに同様の方法で高分解能MRIを行えば、最近注目されている頭蓋内動脈に対する経皮経管拡張術の適応の決定にも有用となることが示唆された。
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