研究概要 |
放射性アイソトープ標識抗体(radioimmunoconjugae)を用いるがんの内部照射療法は原理的に最もシンプルかつ強力である.しかしながら腫瘍への集積性が低いため,未だ実用化には至っていない.放射性核種標識方法を改良し,腫瘍集積性を減少させることなく,正常組織分布を低減すれば,この問題は解決可能である.具体的には,正常組織では分解代謝されるが,腫瘍組織では比較的安定に留まる代謝性の化合物(化学スペ-サ)を選択し,標識用アイソトープ(In-111,Y-90)と抗体の中間に導入すれば良い.本研究の化合物はキレート部分にベンジルEDTA構造を有し,従来用いられてきたDTPA化合物よりもはるかに安定に治療用アイソトープのY-90やIn-114mを配位結合できることが判明した.さらに,官能基を連結する炭化水素型スペ-サの長さを調整することにより,本研究の化合物は標識抗体の体内分布を自由に変化させる特徴を有する.以上の原理に基づき,炭化水素鎖が3,5,7,10個の化合物を合成し,それぞれについて,ヒト大腸癌LS-180移植ヌードマウスモデルで体内動態の検討を行った.その結果,炭化水素鎖7個および10個の化合物(maleimido-C7-benzyl-EDTA,maleimido-C10-benzyl-EDTA)が,放射性核種標識モノクローナル抗体A7による腫瘍集積性に関して最も良好であった. 1.炭化水素鎖数が3,5,7,10個と増加するに連れて,全身からの放射能消失速度が,促進された. 2.腫瘍内および血液中での標識抗体の挙動ならびに安全性は炭化水素鎖数に影響されなかった. 3.したがって,肝,脾,腎等の正常臓器からの洗い出しが,長炭素鎖化合物において,促進されたため,C7とC10では最も良好な腫瘍対正常臓器放射能比を示した.
|