研究概要 |
造影MRIを用いた定量的評価によって、肺野腫瘤病変における肺癌と他疾患との鑑別診断への応用を目的として研究を行った。対象とした症例はは石灰化のない肺野腫瘤病変(長径30mm以下5mm以上)44例で、その内訳は肺癌手術例28例、手術または臨床的に良性腫瘤と診断された16例(結核腫10例、非特異的肉芽腫4例、過誤腫2例)であった。1.5T超電導装置を用い、Spin Echo法TR:500msec,TE:25msecで横断像を撮像した。造影剤としてGd-DTPA 0.1mmol/kgを静注し投与前後で腫瘤内部の信号強度を比較検討した。 以上の結果として、肺癌の造影後の信号強度は造影前に比べ73.9±22.9%(平均±標準偏差)上昇し、良性腫瘤16例全体の信号強度の上昇33.1±38.7%)と比較して有意差(p<0.001)がみられた。良性腫瘤のうち、結核腫は10.3±9.3%、非特異的肉芽腫90.0±35.2%、過誤腫51.0±19%の上昇で、肺癌と結核腫の間には上昇率に有意差がみられ重なりがなかったが、肉芽腫との間には有意差がみられず、特に小さい腫瘤で肺癌との間に重なりがみられた。過誤腫は不均一に造影され、腫瘤内のよく造影される部分と肺癌では、信号強度の上昇率に有意差はみられなかった。 造影MRIによる定量的評価では、石灰化のない結核腫の鑑別診断には有用であることが研究成果として得られた。しかし、肺癌の結核腫以外の良性腫瘤との鑑別には本法のみでは診断困難なことがあり、測定方法の工夫や他の診断方法との併用など今後解決すべき問題が残された。
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