[目的]13C-MRSによる砂ネズミの脳の局所glucose代謝について研究した。 [対象と方法]使用装置は、7.05T超伝導型実験用MR装置で、13C、1Hの共鳴周波数は75.4MHz、300.0MHz、使用コイルは、13Cと1Hで使用可能な1インチのリング型サーフェイスコイル、対象は砂ネズミで、[1-13C]glucoseをトレーサーとした。まず、20%[1-13C]glucose溶液の13C-MRSのspectrumについて、試料全体とVOSY法による局所を比較した。[1-13C]glucose(1g/kg)を砂ネズミの尾静脈よりbolus静注し、頭部全体及び局所(脳、頭皮)の13C-MRSの経時的変化を5分間隔で測定しcontrol群とした。また、両側総頚動脈を20分間血流遮断した虚血群についても同様の測定を行い、脳のglucose代謝を推測した。 [結果及び考察][1-13C]glucose溶液のVOSY法による局所のMRSは、試料全体の測定よりS/Nが悪いものの、約2分ほどで良好なspectrumが得られた。control群における[1-13C]glucoseのbolus静注後の13C-MRSの経時的変化は、頭部全体ではC-C単結合とC=C二重結合の間に[1-13C]glucoseのpeakが検出され、15分後に最大となった後減少した。[1-13C]glucoseのMRI像では、筋肉や皮下の脂肪組織に集積が強かったのに対し、脳付近では比較的集積が弱く、脳ではglucose代謝が速いためと考えられた。一方、局所のspectrumは何れもS/Nが非常に悪く、[1-13C]glucoseのpeakは検出できなかった。虚血群でも同様な検討を行ったが、[1-13C]glucoseのpeakは検出できなかった。これは、充分な磁場均一性が得られなかったことと、13Cの天然存在比と相対感度が極めて低いためと考えられた。
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