子宮頚癌や肺癌にみられるごとく、腺癌は扁平上皮癌に比べると、同一臓器に発生しても放射線感受性が低く、放射線治療により局所制御の難しい場合が多い。しかし、乳癌のように腺癌でありながら、放射線感受性の高いものも存在する。通常、培養細胞で放射線感受性を検討すると、腺癌細胞も生存曲線は扁平上皮癌細胞とあまり差異を認めないことが多く、細胞固有の放射線感受性には、腺癌細胞と扁平上皮癌細胞に大きな差異があるとは考えにくい。宿主との相互関係などの問題も存在するが、癌細胞が集合して一定の構築を形成した場合、放射線感受性に差異が生じてくると考えられる。本研究は各種ヒト悪性腫瘍由来の腺癌細胞と扁平上皮癌細胞から、スフェロイドを作成して、単層培養時の放射線感受性と比較検討し、細胞の集合体のなった場合の放射線感受性の変化を検討した。子宮頚癌および卵巣癌由来の腺癌細胞8種、子宮頚癌由来の5種の扁平上皮癌細胞6種を単層培養により、放射線感受性を検討した。放射線感受性が極めて高く、initial shoulderを示さない腺癌細胞から、10Gy照射しても生存率が10%しか低下しない極めて抵抗性の腺癌細胞まで各種の放射線感受性を示した。腺癌と扁平上皮癌を比較しても、組織型による差異は認められず、単層培養では由来組織型は放射線感受性と関連しなかった。これらの細胞の内、放射線感受性の異なる3種の細胞からスピナ-フラスコを用いて100-450μmのスフェロイドとして放射線照射を行なった。スフェロイドの放射線感受性は、照射線量とスフェロイドの生存率から、50%のスフェロイドを殺すのに必要な放射線の線量(SLD50)を算出して求めたが、単層培養時の放射線感受性の差異は小さくなり、スフェロイドになると比較的放射線抵抗性となった。しかし、腺癌と扁平上皮癌の差異はみられなかった。
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